心を込めて暮らそう

コップを置く時はお静かに
日々の生活で何気なくやっている小さなことでも、心を込めて行うことで美しい時間を作り上げることができます。「心を込めて暮らす」ということがちょっと抽象的過ぎてよく分からないという方は、まずひとつひとつの動作の速度を意識的に緩めて「ゆっくりやってみる」ことをお勧めします。たとえば、ドアをゆっくりと開け閉めする、飲み物を飲んだ後にコップをゆっくりとテーブルに置く、こういった何でもないことに気を配ることによって不思議なことに心がすっきりと整ってくることにお気付きいただけるでしょう。タレントのビートたけしさんが「ドアをバタンと大きな音をたてて閉めるやつはダメだね」とおっしゃっていてその通りだなあと思いました。行動から発生する音に気を付けてみると、それは現在の自分の心の状態を知るのに役立ちます。無意識のうちに大きな音をたててドアを閉めてしまった時など「あ、僕は今焦っているな。少し落ち着かなければ」と反省するきっかけとすることができます。心は何気ない日常の小さな行動に表れます。そこに気を向けることによって、次第に「心を込めて暮らす」ということが理解できるようになるでしょう。また、慌しい毎日の中ではついつい「ながら行動」をしてしまいがちです。たとえば、歯を磨きながら部屋を片付けたり、食事をしながら新聞を読んだり。そんな「ながら行動」を思い切ってやめてみることもお勧めします。歯をしっかり磨いてから片付けをする、食事をしっかり味わってから新聞を読む、などというように、ひとつひとつの行動に専念することで丁寧に暮らすことができるようになるでしょう。行動を分けたからといって時間はそれほど増えません。逆にひとつひとつの行動に磨きがかかり、結果的には別々に行ったほうが良いと気付くでしょう。
ターシャさんの暮らし方

日常の何気ないところに美しさが隠れています
ターシャ・テューダーというアメリカの絵本作家の暮らしぶりが多くの人の注目を集めました。僕もNHKのドキュメンタリー番組でターシャさんの丁寧な生き方を観て以来すっかりファンになってしまいました。ターシャさんは、彼女の美しいガーデニング(庭造り)に関して取り上げられることが多いのですが、ガーディングに関すること以外でも、その生活のひとつひとつに心が込められていてとても素敵なのです。僕がテレビで観た時にはご高齢であったのですが、その言葉遣いや家仕事を心を込めて行う様子などに、決して色褪せることのない女性的な美しさ、明るさ、楽しさを感じたものです。ターシャさんの長男であるセスさんは家具職人をしていて、「古びた家になるように」とターシャさんに頼まれて工法を研究し、たった1人でターシャさんの家を造り上げたそうです。その家と庭一帯をターシャさんは「コーギー・コテージ」と呼び(コーギー犬の「メギー」と一緒に暮らしていたのです。)、電気や水道などの近代設備は最小限に留め、暖炉とベッドとロッキングチェアー、薪オーブンがあるような質素な室内と古い道具を大切に使う昔ながらの生活を実践しました。ハトやニワトリなどの小動物に囲まれながら、庭先のポーチでお茶を飲むのが日課であり、周囲の草花や動物達をスケッチして過ごしました。一日の大半を草花の手入れに費やし、花柄のドレスやエプロンを手作りし、山羊の乳を搾り、庭でとれた果実でジャムやパイを作るという半ば自給自足の生活です。ターシャさんはお料理も得意らしいのですが、その秘訣は「近道を探さないこと」だそうです。何事もゆっくりと心を込めて行う生活スタイルがその言葉に集約されていますね。ターシャさんは残念ながら2008年に亡くなってしまいましたが、たくさんの本や映像が出版されていて今でもその丁寧な暮らしぶりを彼女に教わることができます。
内田彩仍さんの暮らし方

日々の暮らしを美しく
内田彩仍さんという福岡県にお住まいの女性の暮らしぶりに多くの人が憧れています。プロフィールによりますと彩仍さんはスタイリストとしてお仕事をしていらっしゃったようですので、美しいものに関する感覚と気遣いは人一倍優れているのだと思います。彩仍さんの本を読むと、そのナチュラルで丁寧な暮らしぶりに影響されて、自分もそのように暮らしたいと思うようになります。ジャムの瓶に貼るラベル、布で作る生活雑貨、収納のアイディアなど、日々の暮らしを楽しく美しくする発想をたくさんお持ちの方なのです。彩仍さんの本は大人気で、書店で平積みにされているのをよく見かけます。日々の慌ただしさに行動が乱れ、その乱れた行動の痕跡が部屋のあちこちに見られるようになったら彩仍さんの本を開くようにしています。彩仍さんの本は「心の背筋」をしゃんとさせてくれる力を持っていて、まずは身のまわりから美しくしよう、美しく暮らそうと決心させてくれます。
今持っているものの中に幸せがあります

幸せはすぐ近くに
今持っていないことを嘆くのではなく、持っているものを「ありがたい」と考えたほうが幸せだといつも思います。デイヴィッド・リンチ監督の『エレファント・マン』という映画の一場面で、「あなたの写真をこの部屋の一番良い場所に飾っておきます」というセリフがあってとても感動したことがあります。写真の置き場所ひとつにしても心を込めて考えることができ、そのようなことのできる人が豊かな人生を送ることができるでしょう。豪華なお料理をたらふく食べたり、欲しいものをすぐに買って物欲を満たすことなどは、その場限りの空しい快感であって、その後に待っているのは後悔と寂しさだけです。つまり幸せというのは、誰かに与えてもらうものではなく、自分で作り出す(気付く)ものであると言うことができますね。「わたしは何も持っていない。わたしには何もない」と感じている人がいたらそれは大きな間違いでしょう。あなたは実に多くのものを持っているのに、それに気付いていないだけです。あれも持ってないこれも持ってない、だから自分はだめなんだ、という考え方では、永遠に満たされることはないでしょう。今自分が持っているものに磨きをかけ、毎日の何気ない行動ひとつひとつを丁寧に行いましょう。そうすればたちまち世界は美しく輝きだします。
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