音楽

ラフマニノフの美しいシンフォニー

映画を観ているかのような音楽

美しい旋律でいっぱいのアダージョ

美しい旋律でいっぱいのアダージョ

ロシアの作曲家ラフマニノフは、ロマンチックで美しい作品をたくさん残していますが、その中でも特にお勧めしたいのは『交響曲第2番 第3楽章』です。この地球上にこれほど素敵なメロディーが存在するのかとため息をついてしまうくらい美しく、その印象的な旋律が楽曲を通して様々な楽器でドラマチックに奏でられます。ラフマニノフの音楽は、映画やテレビドラマのBGMとして使われることがとても多いのですが、この『交響曲第2番 第3楽章』は逆に、音楽から映像を思い起こさせる力を持っています。目を閉じて聴くと、「自分だけの映画」を観ているかのように様々な場面が頭の中のスクリーンに映し出されるでしょう。たとえば僕は、ウラジミール・アシュケナージ指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団演奏のCDを愛聴しているのですが、5分18秒あたりのジワジワと高揚してくるあたりでは、長くまっすぐ上に伸びた階段の向こうに白い光が見え、音楽が進むにつれてその階段を一段一段上っていき、6分50秒あたりでついに白い光に手が届く、というような映像が浮かびます。大事な予定の前や集中したい時などに、このように頭の中で映像と音楽のコラボレーションを味わって気分を高めています。

ラフマニノフについて

少年時代のラフマニノフ

少年時代のラフマニノフ

セルゲイ・ヴァシリエヴィチ・ラフマニノフは、ロシアの作曲家でありピアニストであり指揮者です。1873年に生まれて1943年に69歳で亡くなりました。勉強よりも遊びに夢中になり過ぎて12歳の時に全ての学科の試験に落第するという快挙(?)を成し遂げ、悩んだ母親は彼をモスクワ音楽院に入学させます。学生時代にはチャイコフスキーに才能を認められたり、巨匠スクリャービン(作曲家・ピアニスト)と同級生だったり、豊かな音楽研鑽の時代を過ごしました。ピアノの教授であったズヴェーレフ先生はとても厳格な人で、ピアノ以外のことに興味を持つことを禁じていましたが、ラフマニノフは作曲への熱意を抑えることができず、素晴らしい作品を次々に生み出しました。(人は禁止されると逆にそのことに夢中になるものです。ズヴェーレフ先生の指導は正しかったということになりますね。)作曲に関してラフマニノフは「私は作曲する際に、独創的であろうとか、ロマンティックであろうとか、民族的であろうとか、その他そういったことについて意識的な努力をしたことはありません。私はただ、自分の中で聴こえている音楽をできるだけ自然に紙の上に書きつけるだけです。私が自らの創作において心がけているのは、作曲している時に自分の心の中にあるものを簡潔に、そして直截に語るということなのです。」という言葉を残しています。甘美な抒情に満たされた作品の数々は、批評家や演奏家からは酷評されることが多かったそうですが、一般的な聴衆からは熱狂的に支持されました。また、かなり大きな手の持ち主で、12度の音程(小指でドの音を押しながら、親指で1オクターブ半上のソの音を鳴らすことができる。)を左手で押さえることができたと言われており、素晴らしいピアニストでもありました。人間的には生真面目で寡黙、どちらかといえば陰気な性格だったと言われています。

交響曲第2番 第3楽章について

傷付きやすかったラフマニノフ

傷付きやすかったラフマニノフ

ラフマニノフは、1895年に『交響曲第1番』を完成させましたが、記録的な大失敗に終わります。失敗の原因として、指揮者が放漫で(酔っ払いながら指揮をしていたという話もあります)、オーケストラをまとめ切れていなかった可能性が指摘されています。この曲はラフマニノフの存命中は二度と演奏されることはありませんでした。傷付きやすい性格だったラフマニノフはこの失敗により神経衰弱が酷くなって自信喪失となり、ほとんど作曲ができない状態にまで陥りました。しかしここで彼の人生の転機となるような大きな出逢いがありました。精神科医のニコライ・ダーリはラフマニノフに「あなたは素晴らしいピアノ協奏曲を作る」という暗示療法を行い、そのおかげでラフマニノフは徐々に自信を取り戻していきました。ラフマニノフもやはり「褒められて育つ子」だったのですね。(人は誰でも「褒められて育つ子」です。)それ以来次々と素晴らしい音楽を作曲し、ついに鬼門であった交響曲の新作を完成させます。そういう意味ではこの『交響曲第2番』は、一人の人間が挫折を乗り越えるまでを描いた人間再生の音楽とも言えるかもしれません。

気分を高めてくれる音楽

白い光で胸がいっぱいになるような音楽

白い光で胸がいっぱいになるような音楽

最初の項でも少し書きましたが、僕はこの『交響曲第2番 第3楽章』を気分を高めたい時によく聴いています。もちろん食事をしながら、お酒を飲みながら、読書をしながら、車を運転しながらなど、あらゆる場面で心地良く聴ける音楽です。この曲は、「白い光にだんだん満たされてくるようなイメージ」「階段を一段一段上って高みを目指すようなイメージ」を持っていて、大事なイベントごとの前や集中したい時に聴くと絶大な効果があります。ヘッドホンを使って周囲の環境音を遮断して聴くとその効果は倍増します。また、一曲の中で様々な表情を感じさせてくれる音楽ですので、聴いていると次から次へと映像が浮かんできます。一曲を通して聴くと、一本の良い映画を観終わった後のような清々しさを感じることができるでしょう。過去の素敵な恋物語を回想したり、忘れていた出来事をドラマのように思い出したりできるとても不思議な音楽です。15分ほどの音楽ですのでお時間を作っていただきやすいと思います。気分を高めたい時にぜひお聴きください。

この記事に関連した商品

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。

ピリカの会

ピリカの会は、美しいものを暮らしに取り入れたいという方のための会です。美しいものを愛する方であればどなたでも無料でお入りいただけます。

入会無料