ショコラティエ

箱もチョコレートでできています
チョコレートは、数々のお菓子の中で独立して一つのジャンルを確立しています。パティシエと呼ばれるお菓子作りの専門家とは別に、「ショコラティエ」というチョコレート作りを専門とする職業があるくらいです。ショコラティエは、チョコレートの歴史に関する知識や、味と質感を見極める感性、チョコレートを軟らかくする技術、型に入れて固める技術、チョコレートで繊細に装飾する技術などを持ち、まるで美術品のようなチョコレート菓子を創造するプロフェッショナルです。フランスでは優れたショコラティエに「M.O.F.(フランス国家最優秀職人章)」が授与されるなど、アーティストとして扱われています。ちなみに女性のショコラティエは、「ショコラティエール」と呼ばれることもあるそうです。
魔法で固まったかのようなチョコレート

ハートの形が美しい
チョコレートはもともとは貴族たちが愛飲した飲み物でした。今でもアメリカでは「ホットチョコレート」と言えば「ホットココア」のことをさします。日本ではココアの粉末を使用したものを「ココア」、生チョコレートに水分を足したものを「チョコレートドリンク」と呼ぶ傾向がありますが、今のところこのような名称について厳密な定義はありません。僕は石けんが大好きなのですがそれは、良い香りのする液体が魔法にかけられて固形にされたような不思議なイメージを感じるためで、チョコレートにおいても同様の感じを受けます。美しいチョコレートを眺めていると、それが液体だった頃のなめらかな動きが想像されます。素晴らしい甘さを持った液体が、その顔を見たものを何でも石に変えてしまうという魔女メデューサの呪いによって一瞬のうちに固体に変化したかのような不思議な感覚を楽しみながら、いつもチョコレートを眺めています。
テンパリング

光沢のある美しいコイン型チョコレート
チョコレートの職人であるショコラティエ(ショコラティエール)の仕事場には、大理石で作られた台が置いてあり、その上で液体のチョコレートを美しく造形し、固体に変えていきます。大理石の冷たさで熱い液体のチョコレートを冷まし、温度調整によってチョコレートに含まれるココアバターの結晶を安定させていくこの作業のことを「テンパリング」と言います。チョコレートは普通に冷ましてしまうと光沢が出ません。美しい光沢を出し、なめらかな食感を出すためにこの作業は欠かせないのですね。チョコレートが美しく輝いて見えるのは、このテンパリングのおかげなのです。
幸せの魔法

宝石のように美しいチョコレート
ラッセ・ハルストレム監督、ジュリエット・ビノシュ&ジョニー・デップ出演の映画『ショコラ』では、チョコレートが人々を幸せにしていく様子が描かれています。チョコレートの魔法によって、涙の人は笑顔に、閉鎖的な人は開放的に、意地悪な人は優しく、不幸せな人は幸せになります。チョコレートにはそんな「幸せの魔法」が秘められています。宝石のようにキラキラと美しい一粒が口の中で溶け、心に素敵なものをもたらしてくれるのでしょうね。実際、チョコレートは栄養価が高く、登山などの際の非常食として携帯されたり、アメリカでは軍用に用いられたりしています。カロリーの面だけでなく、その素晴らしい甘味や、「テオブロミン」と呼ばれる苦味成分が、心身に安らぎをもたらしてくれると言われています。
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